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卒業研究:機械力学研究室

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交通事故の歩行者脚部傷害の再現における上体質量の影響評価

前方注視点をフィードバックする力覚支援操舵の目標軌跡追従性能

自動車車体構造の荷重伝達の解明

交通事故の歩行者脚部傷害の再現における上体質量の影響評価

内田綾一 船ケ山康平 加藤伸章(院生) 竹内奈々(院生)

歩行者の脚部を守る傷害軽減ボディの開発

 現在,国内では年間4,000人もの人が交通事故で死亡しております.また,交通死亡事故のなかでも歩行中における事故が約4割と最も高い割合となっています.このことから今日では自動車の乗員保護に続き,歩行者保護対策が自動車メーカーのなかで重要視されるようになってきました.現状,歩行者事故における死亡者の受傷部位では頭部が半数以上を占め,重傷者の受傷部位では脚部が約4割と最も高い割合を占めております.このため,国交省では平成15年度より頭部保護を目的とした頭部保護試験が実施され,最近では平成23年度より脚部保護を目的とした脚部保護試験が実施されるようになりました.
 脚部保護試験ではリアルワールドでの対歩行者事故を再現するため,歩行者の脚部のみを模擬した脚部インパクタという棒状のものを自動車の前面部に衝突させることで,脚部の骨折や膝靭帯の損傷リスクを評価しています.しかし,この脚部インパクタには歩行者の上半身にあたる部分(上体質量)が再現されておらず,過去の研究では上体質量が脚部傷害に影響を及ぼすとの報告がされています.
 そこで本研究では,上体質量が脚部傷害に及ぼす影響を車両のボディタイプ別に明確化することを目的としております.また,今後の車両開発に向けたフィードバックとして,脚部傷害の軽減に効果的な設計レイアウトを明確化することを目的としております.

今注目されている最先端の自動車安全技術

 私たちは交通事故における死傷者を少しでも減らしたいという思いを胸に日々,研究に取り組んでおります.また,日本政府は“平成30年までに年間交通死亡者数2,500人以下を目指す”という目標を掲げており,本研究を通して交通事故による死傷者低減に向けて自動車メーカーとともに発信していける点にとてもやりがいを感じています.
 最近の歩行者保護技術として,歩行者と衝突する際にボンネットを持ち上げて衝撃を緩和する「ポップアップフード」やぶつからないクルマで話題の「アイサイト」,また今後市場において普及が見込まれる「歩行者用エアバッグ」など各社様々な技術を駆使し,死傷者低減に向けてアプローチしており,私たちも“負けていられないという想い”と“今注目を浴びている分野を研究できている喜び”をモチベーションにチーム一丸となって切磋琢磨しております.
 普段の研究生活では自動車メーカーのエンジニアとのミーティングを通して最新の歩行者保護構造に触れながら,チームで意見を出し合い研究を進めていける点に面白さを感じております.また,学会での講演も多くプレゼンテーション能力はもちろん,社会に出てからも即戦力となるスキルを身に着けることが可能です.そのため,自動車が大好きという人や自動車の安全技術に興味がある人には是非オススメしたい研究室です.

教員からのひとこと【槇徹雄先生】

 交通事故は身近な事故の代表的なものであり,毎年多くの交通事故により犠牲者が生まれています.これまでに自動車メーカーを含めて乗員保護の研究は数多く行われ,多くの安全対策が施されてきましたが,未だに交通事故は無くなりません.乗員保護および歩行者保護の研究は,すなわち起こるべき事故による犠牲者の未来を守ることであり,交通事故ゼロの社会を目指すものです.

前方注視点をフィードバックする力覚支援操舵の目標軌跡追従性能

尾花竜弥 岩渕拓哉(院生) 関正寛(院生) 橋本鉄平(院生)

運転者の反応・行動をドライビングシミュレータで分析!

 自動車交通事故の主な発生原因はヒューマンエラー(運転者の認知・判断・操作の誤り)によるものであり,発生原因全体の約9割を占めることが知られています.そこで近年,ヒューマンエラーを低減し安全な運転を実現することを目的として,運転者をサポートする「車線逸脱警報」や「衝突被害軽減ブレーキ」といった「運転支援システム」が数多く実用化されています.運転支援システムは運転者の知覚へ情報を提供し,運転者がその情報に反応して運転行動に反映させることで安全な運転を実現します.
 近年注目をされている「力覚操舵支援システム」と呼ばれる運転支援システムは,自動車の走行目標からの逸脱度合いの情報を運転者へハンドルを介して力覚情報として伝達することで,運転者にハンドル操作の修正を促します.力覚とは携帯電話のバイブレーションなど,人が力を感じる感覚のことを指し,利用者へ直感的な情報提示をできる利点があります.一方で,運転支援システムが有効に機能するためには,運転者に対してシステムが意図している情報を確実に伝達することが必要であり,運転支援システムを開発する上で運転者との協調性を向上させることは極めて重要となります.
 そこで私たちの研究は,東京大学生産技術研究所のドライビングシミュレータ用いて,力覚操舵支援システムを使用した際の運転者の運転行動を分析し,運転者が運転の際に手がかりとしている物理量を明確することで更なる協調性の向上の実現を目指しています.

1つの分野に留まらない研究活動

 私たちのチーム特徴は1つの自動車の技術分野に留まらず研究活動を行っている点です.共同研究先の東京大学生産技術研究所(東大生研)の研究室で「運転支援技術」に関する研究に取り組む一方,機械力学研究室では卒業研究とは別に「衝突安全技術」に関する研究に取り組んでいます.2足のわらじとなり苦労することも多いですが,1つの技術分野に捕らわれることなく,多面的な観点から自動車乗員の快適性や安全性に関する研究に取り組める環境であると思います.
 研究生活においては,週に1回東大生研で研究の進捗報告会があり,自分の1週間の成果を5分程度でまとめて発表するため,短い時間で分かりやすく簡単に相手に伝えるスキルを磨くことができます.また,進捗報告会の日だけでなく週に数回,東大生研に足を運び研究をしていますが,機械力学研究室とは異なる環境での活動となるため研究への良い刺激となっています.特に,東大生研には留学生が多く在籍しているため,外国人とコミュニケーションをとることのできる機会が多いこともこのチームの魅力の1つです.

教員からのひとこと【槇徹雄先生】

 交通事故を未然に防ぐ運転支援システムは,現在生産されている乗用車にも数多く搭載されてきています.この技術の難しいところは,機械的な動作だけでなく,運転者に適切な操作を示唆するという人間の認知を含めた機械工学を考える必要があります.ヒトに優しい機械づくりを進めることでこれからの社会に貢献していきます.

自動車車体構造の荷重伝達の解明

田口雅貴 中原瞭 岩科正樹(院生) 中嶋健明(院生)

「力の流れ」が車体を変える

 現在,自動車業界は,燃費の向上やCO2排出量削減のために車両軽量化に積極的に取り組んでいます.特にボディ,車体は車両全体の中でも重量が大きいため,軽量化が強く求められており,自動車メーカーでも車体軽量化を目指した取り組みが盛んに行われています.この車体軽量化のためには,車体構造内を通る力の流れを把握することが鍵となります.力の流れ,荷重伝達を把握することができれば,車体の中で力があまり伝わっていない部分,つまりムダな部分を見つけることができるためです.反対に力が強く伝わっている部分をさらに補強することも可能となります.ところが,荷重伝達の把握は容易ではありません.従来では荷重伝達を表現する方法が確立されておらず,設計者が頭の中で推測することしかできていませんでした.
 そこで私たちは,Ustar(ユースター)という,荷重伝達を表現する新しい指標を用いることで,目に視えない力の流れを可視化し,自動車車体の荷重伝達を明らかにすることを目指します.コンピュータ上で衝突実験やコーナリング,レーンチェンジ等を想定したシミュレーションを行い,それぞれのシーンにおける力の流れを明らかにすることで,車体の軽量化や衝突安全性向上,操縦安定性向上にアプローチしていきます.

車体開発の最先端を行く!

 自動車車体の力の流れを可視化するというこの研究は,多くの自動車メーカーから注目されており,企業の第一線で活躍されているエンジニアと協力して進めているテーマでもあります.車体開発の最先端を行くこの研究だからこそ,苦労は大変なものではありますが,その分得られる達成感もひとしおです.自分の研究の成果が車体開発に直結しているというのもこの研究の良いところです.将来のクルマに自分の研究の成果が反映されていると考えただけで,とてもワクワクしてきます. クルマ好きにはたまらない研究であると言えるでしょう.もちろん,就職しても即戦力になれるような能力が身に付きます.
 機械力学研究室は和気あいあいとした雰囲気で,毎年恒例の旅行の他に,飲み会に行ったり,研究の合間にスポーツをしたりと,とても楽しい研究室です.研究室OBとの交流も多く,久しぶりに会った先輩と飲みに行ったり,就職活動に役立つようなお話を聞く機会もあります.研究に行き詰まった時にも,互いに協力し合うなど,充実した研究室生活を送ることができます.

教員からのひとこと【櫻井俊彰先生】

 「構造に力が加わったとき,構造物中をある道筋を辿る」と言われると自然なことのように聞こえるかもしれません.しかし,これまでにこの力の道筋を合理的に表す手法は開発されておらず,経験則に基づいた概念図ばかりが出回っています.あるべき形を明らかにし,よりよい自動車開発の手助けを行っていきます.

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