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卒業研究:機械材料研究室

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金属材料の疲労特性に関する研究

ケイ酸塩ガラスにおける階層性ナノ多孔層の形成メカニズム

ホウ素系熱電変換材料の開発

金属材料の疲労特性に関する研究

宮崎碧海 兼子広樹 設楽悠 丸山賢一 久松勝徳

機械部品の最も大きな破壊原因の一つである”疲労”

 金属製品の製造方法の一つに,材料を溶解し,型に流し込み成形する鋳造というものがあります.使用される材料には,鋳鉄が多く使用されています.鋳鉄中に存在する黒鉛が球状化されたものは球状黒鉛鋳鉄と呼ばれ,鋼に匹敵する強靭さを持ち,鋼に比べて低比重,低コストであるといった利点があります.そのような点からこの鋳鉄は自動車のブレーキディスクや複雑な形の水道管などに用いられています.一方,機械部品の破壊原因の約8割が金属疲労と呼ばれる現象によるものといわれており,疲労における強度特性の評価が重要となり,そのため以下の方法で疲労強度を研究しています.
 一度では破壊に至らないような小さな荷重でも,繰返し付加することで破壊が起こることを疲労と言います.鉄鋼材料では一般的に1千万回繰返しても破壊せず耐えることができる応力の限界値があります.それは疲労限度と呼ばれ,疲労破壊が生じない様に設計するための指標となります.この疲労限度を求めるために繰返し応力を負荷する装置,回転曲げ疲労試験機と軸荷重疲労試験機を用いて試験を行っています.また,疲労によって部品にき裂が入ることがあります.通常の小さな機械部品では,き裂が発生する時を寿命としています.しかし,大型の構造物ではき裂が発生してもすぐには破壊せず,き裂が進展し限界の長さになると破壊します.き裂がある長さまで進展する繰返し数は構造物の安全管理や損傷を考えた設計をする上で重要な要素です.これを調べるためにき裂を導入した試験片に繰返し荷重を負荷するサーボパルサー疲労試験機を用いて疲労き裂進展試験を行っています.

私たちの身の回りにある金属材料と疲労

 細い鉄の針金が同じく鉄でできているニッパーで切れることや,鉄の中でも錆びにくいものとそうでないものがあることなどに疑問を持ったことはないでしょうか.そういった疑問に答えをくれるのが材料学です.私はそうした身近な疑問を解決してくれる材料学に興味を持ち機械材料研究室への配属を希望しました.
 私が研究テーマに選んだ金属疲労は小さな力を繰返し加えることで金属が破断する現象のことであり,ちょうど針金を繰返し折り曲げることで折るというのも疲労現象の1つです.この疲労についての研究は新材料の研究・開発に比べると地味に見えるかもしれませんが,既存技術の保証をする上でとても重要な研究です.特に自動車や飛行機などに用いられている部品が破壊してしまうと人命に関わる重大な事故が発生します.古くは,1985年の日航ジャンボ機墜落事故や2009年の大阪エキスポランド ジェットコースター脱輪事故などが挙げられます.研究室では,先生の指導や先輩のアドバイスを頂きますが,研究を進めていくプロセスやスケジュール,方法は自分自身の判断によることがほとんどです.それだけに多くの時間をかけて良い結果や考察が生まれたときの喜びは大きなものとなります.私はそうしたことにやりがいを感じています.

教員からのひとこと【白木尚人先生】

 「金属疲労による損傷」は解析やシミュレーションによって簡単に推測する難しい分野です.だからこそ,実験によって明らかにする方法しかありません.実験自体大変時間がかかりますので,根気と体力を必要とします.実験中だけでなく実験後も破面を観察したり,得られた結果を一つ一つ検証したりすることによって,初めて社会に役に立つ信頼できるデータとなるのです.

ケイ酸塩ガラスにおける階層性ナノ多孔層の形成メカニズム

小平康介 梅永健登 渡辺修平 中田瑛大(院生) 太田壮彦(院生)

ナノ構造を用いて実現する防汚・防曇・低反射ガラス

 ガラスは窓ガラスやビンなど,私達の身の周りで様々に広く使用されており,現在ではその多岐にわたる用途に対応するために,ガラスに対する種々の機能性付与が行われています.中でもガラス表面の水に対する濡れ性のコントロールする手法は近年目覚ましい発展を遂げており,建物の外装や医療機器など非常に多くの分野で用いられています.特に超親水性(ガラスと水滴のなす角度が10°以下になるほど高い親水性)を有するガラスは防汚性・防曇性を示すことから透明性や視認性を要求されるガラスや鏡などに利用されています.
 私たちは,我々の研究室で数年前に開発された表面にナノ多孔質層を有するガラスについて研究しています.このガラスは表面から直径数十nmの多孔構造が,徐々に口径が小さくなりながら厚さ数百nm~数μmにわたって層(HNLと呼んでいます)を形成します.このHNLガラスはその階層性多孔層から次のような様々な特性を示します.

  1. 超親水性・・・多孔質層内に水滴が毛細管現象により入り込むため超親水性を示します.また構造由来の超親水性である為使用環境等に制限がなく,高い耐久性を示します.
  2. 防曇性・防汚性・・・ガラス表面に付着する細かな水滴が多孔質構造内部に濡れ広がることにより水滴にならず乱反射しない為,曇りを抑制します.また表面に汚れが付着した場合も水をかける事で汚れとガラスの表面の間に水が入り込み,汚れを浮かせて洗い流すため汚れにくいガラス表面になります.
  3. 低反射性・・・多孔質構造が光の波長より小さく,また孔の大きさが徐々に小さくなるため屈折率の変化が穏やかなことからガラス表面での反射を少なくすることが出来ます.一般的なガラスに比べて反射率をでは10%程度ガラス表面で反射するのに対し,HNLガラスでは2〜3%程度となっております.

 このように多孔質構造を有することで様々な機能性を示しますが,現状どのようなメカニズムでこの構造が形成するのかわかっておりません.そこで私たちは作製条件を変化させ分析を行うことで構造形成メカニズムの解明を行っています.さらには,この構造を活用した新しい機能性材料の創成を行っています.

ON/OFFのメリハリと活発性の強い研究室です

 機械材料研究室では,集中して研究を取り組める環境や設備が整っています.「コアタイム」という時間が存在し,その時間内では学部生・院生は研究に励みます.もちろんそれ以降の研究も可能で,研究室に泊まり込みで研究に取り組む者も少なくありません.研究テーマによっては「分析室」と呼ばれる施設で特定の測定機器に触れることで,ひとつのスキルとして会得すること,知識を培うことができ,実験を重ねに重ねて考察を行い研究テーマへの理解力を深めることが出来ます.
 研究テーマによって化学が絡むテーマもあり,機械工学科には物理を選択して入学してきた学生が多く,分からないことも多いと思いますが,分からないことがあっても,先生や院生の方に丁寧に教えてもらい,就職活動でも親身になって相談に乗ってもらえます.また,当研究室では研究はもちろんのことですが,学校行事にも積極的に参加することが当研究室の特徴の一つであると言えます.体育祭では各種目への参戦,文化祭では飲食系の出店,ナイトラリーなどの行事に参加したり,ご飯を食べに行ったりなど先生方と先輩方,同期の仲間と共に同じ時間を過ごせます.

教員からのひとこと【藤間卓也先生】

 階層性ナノ多孔層ガラスは,本研究室で近年見出した新しい材料です.最初は決して狙って開発したわけではなく,学生達の自由な発想と観察力で,他テーマの実験の中から偶然に見つけ出し,それを詳細に分析し確立してきました.このテーマ自体の面白さもさることながら,学生と教員があるときは師弟として,あるときは対等な共同研究者として,真摯に未知の現象に取り組むことの面白さ,醍醐味は格別のものがあります.

ホウ素系熱電変換材料の開発

飯嶋篤 五十木将人 遠藤慶輝(院生) 清水夏輝(院生) 中村悠利(院生)

廃熱から電気を取り出す?! 環境負荷が少ない熱電発電

 東日本大震災以降,日本ではエネルギー問題が改めて注目されています.熱電変換材料は,温度差が存在すれば電気を生み出せることから,エネルギー問題の解決策の一つとして考えられています.その原理は,図の様に材料の両端に温度差を与えると,電荷が高温側から低温側に移動し,電力を発生することが出来ます.私たちは,その熱電変換材料の中でもAlMgB14という材料について研究しています.
 AlMgB14は,結晶の大部分がホウ素原子で構成される,多ホウ化物系熱電材料であり,高い融点と高温での高い化学的安定性を持つため,高温環境下での発電に適した材料です.またAlMgB14は,結晶内に存在するAlとMg原子の比率を制御することで,n型材料にもp型材料にもなる材料です.同じ材料系でn型とp型が存在するため,発電する際に2種類のAlMgB14を組み合わせることで発電を行うことができます.発電用にn型とp型の熱電変換材料を組み合わせたものを,モジュールと呼びこのモジュールを同じ材料系で作製できると,耐久性など向上が見込めます.このような特性を持つAlMgB14について,私たちは材料の発電性能向上や最適なモジュールの仕組みの開発などを目標に研究しています.

世界で他にどこもやってない最先端の研究ができる?!

 当研究室で行っている熱電変換材料の研究の面白さは,世界で最先端の研究ができるという点です.多ホウ化物系の熱電変換材料の分野で,他大学や他の研究機関とも連携しながらp型n型両方の材料を研究し,モジュールを使用して発電実験を行っている研究室は他にはありません.
 私達が取り組んでいる熱電変換材料は夢のような材料ですが,まだ解決すべき多くの問題が残っているため,実用化されている分野は砂漠や宇宙環境などの一部に限られています.今取り組んでいる問題は,熱電変換材料の性能を向上させるにはどうしたらいいのか? モジュールで発電効率を上げるためにはどうすればいいのか? などです.最先端の研究であるため分からないことも多く不安もありますが,課題を解決するために日々実験結果を重ね,新たな発見をしたときに大きなやりがいを感じることができます.また,日々の試行錯誤を通して,自分自身も成長できる点も研究の魅力だと思います.
 東京都市大学では毎年,体育祭,文化祭,ナイトラリー,研究室対抗スポーツ大会などの行事が充実しています.当機械材料研究室ではそれらの活動にも参加することで,研究活動ばかりの鈍った体?! を動かしてリフレッシュしたり,研究室のメンバーの親睦を深めることができます.

教員からのひとこと【丸山恵史先生】

 熱電材料の高性能化を目指すには,様々な分野を調査し,それらを融合して取り組む必要があります.授業で習う事以外にも多くの事を調べる必要があり大変な研究ですが,新しい材料を合成した時,狙い通りに良い材料を作製できたときの喜びは計り知れないものがあります.熱電の研究を通して,幅広い分野を調査する情報収集能力,実験を行う実行力,実験結果を考察し次の実験に反映させる力を身に着けてくれると期待しています.

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